五心間の距離など
内積の性質を使って様々な距離を求めることができます。(Rは外接円の半径)
(1)頂点Aと重心Gまでの距離の二乗は、(BG、CGも同様)
|AG|²=(2b²+2c²-a²)/9
(2)垂心Hと外心Oの距離の二乗は
|OH|²=3(R²+R²+R²)-(a²+b²+c²)=9R²-(a²+b²+c²)
(3)垂心Hと重心の距離の二乗は、
|HG|²=4R²-4(a²+b²+c²)/9
(4)外心Oと重心Gの距離の二乗は、
|OG|²=R²-(a²+b²+c²)/9
(5)外心Oと内心Iの距離の二乗は、
|OI|²=R²-abc/(a+b+c)
(6)垂心Hと内心Iの距離の二乗は、
|HI|²=4R²-(a³+b³+c³+abc)/(a+b+c)
(7)重心と内心Iの距離の二乗は、(s=(a+b+c)/2、rは内接円の半径)
|GI|²={bc(-a+b+c)+ca(a-b+c)+ab(a+b-c)}/(a+b+c)-(a²+b²+c²)/9
=(s²+5r²-16Rr)/9
(8)フェルマー点Fと重心Gの距離の二乗は、
|FG|²=(a²+b²+c²)/18-abc/(6√3R)
五心間の距離等(3辺の長さをつかった内積計算の応用)
三角形の三辺の長さをつかった内積が有力なときがあります。
ここでは、幾何学的手法ではなく内積をつかって、垂心と外心の距離など、五心間の距離や様々な性質を求める方法を紹介します。
[内積の公式]
△ABCにおいて、BC=a、CA=b、AB=cとするとき、
(AB↑・AC↑)=(b²+c²-a²)/2
任意の点Pに対して、PA↑=x↑、PB↑=y↑、PC↑=z↑、|x↑|=x、|y↑|=y、|z↑|=z、とします。今、PD↑=x↑+y↑+z↑となる点Dを考えます。
△ABP、△BCP、△CAPで、内積公式より、それぞれ、
(x↑・y↑)=(x²+y²-c²)/2
(y↑・z↑)=(y²+z²-a²)/2
(z↑・x↑)=(x²+z²-b²)/2より、
|PD|²=(x↑+y↑+z↑・x↑+y↑+z↑)
=(x↑・x↑)+(y↑・y↑)+(z↑・z↑)+2(x↑・y↑)+2(y↑・z↑)+2(x↑・z↑)
=3(x²+y²+z²)-(a²+b²+c²)
|PD|²≧0より、
任意のPについて、x²+y²+z²≧(a²+b²+c²)/3
[定理1] 任意のPについて、頂点までの距離の二乗の和は、
x²+y²+z²≧(a²+b²+c²)/3
特にPが外心のとき、外接円の半径をRとすると、x²=y²=z²=R²より、9R²≧(a²+b²+c²)
[定理2] 外接円の半径をRとすると、
9R²≧(a²+b²+c²)
Pが重心のとき、重心Gの位置ベクトルは、(x↑+y↑+z↑)/3なので、|PD|=0より、
[定理3] Pが重心のとき、頂点までの距離の二乗の和は最小で、
x²+y²+z²=(a²+b²+c²)/3
次に、点Pを起点に考えると、PD↑=x↑+y↑+z↑、PG↑=(x↑+y↑+z↑)/3より、
PD↑=3PG↑
点Dは、点Pから重心Gを通る直線上で、重心までの距離の3倍である。
したがって、点Pから重心Gまでの距離は、
|PG|²=((x↑+y↑+z↑)/3・(x↑+y↑+z↑)/3)={3(x²+y²+z²)-(a²+b²+c²)}/9
=(x²+y²+z²)/3-(a²+b²+c²)/9
[定理4] 任意の点Pと重心Gまでの距離の二乗は、(x,y,zは点Pと各頂点までの距離)
|PG|²=(x²+y²+z²)/3-(a²+b²+c²)/9
これより、次のことが導かれる。
点Pが外心Oのとき、x²=y²=z²=R²だから、
|OG|²=R²-(a²+b²+c²)
[定理5]外心Oと重心Gの距離の二乗は、
|OG|²=R²-(a²+b²+c²)/9
[定理6]
x²+y²+z²が一定の点の集合は、重心Gを中心とした円である。
点Pが頂点Aのとき、x=0、y=c、z=bより、x²+y²+z²=b²+c²だから、定理4より、
[定理7] 頂点Aと重心Gまでの距離の二乗は、(頂点B、Cも同様)
|AG|²=(2b²+2c²-a²)/9
[定理8] △ABCの内部(または境界)にある点で、x²+y²+z²が最大である点は、長さが最小である辺に対する頂点に あるときで、最大値は、(aが最小辺とすると)
b²+c²
Pが外心Oのとき、
よく知られた定理に、垂心Hは、OH↑=x↑+y↑+z↑であるから、外接円の半径をRとすると、
x²=y²=z²=R²より、
|OH|²=3(R²+R²+R²)-(a²+b²+c²)=9R²-(a²+b²+c²)
[定理9] 垂心Hと外心Oの距離の二乗は、
|OH|²=9R²-(a²+b²+c²)
必要であれば、公式、R²=a²b²c²/(a+b+c)(a+b-c)(a-b+c)(b+c-a)をつかえば、3辺a、b、cであらわすことができる。
(以下同じ)
垂心Hと重心Gの距離は、HG=2OH/3より、
[定理10] 垂心Hと重心の距離の二乗は、
|HG|²=4R²-4(a²+b²+c²)/9
逆に、定理4より、|HG|²=(x²+y²+z²)/3-(a²+b²+c²)/9より、
4R²-4(a²+b²+c²)/9=(x²+y²+z²)/3-(a²+b²+c²)/9から、
[定理11] 点Pが垂心のとき、
x²+y²+z²=12R²-(a²+b²+c²)
点Pが外心Oのとき、内心の位置ベクトルは、(ax↑+by↑+cz↑)/(a+b+c)だから、
(OI↑・OI↑)を計算すると、
[定理12] 外心Oと内心Iの距離の二乗は、
|OI|²=R²-abc/(a+b+c)
傍心との距離の場合は、∠Aに対する傍心は、aを-aに、∠Bに対する傍心は、bを-bに∠Cに対する傍心は、cを-cにすればよい。
[定理13] 外心Oと∠Aの傍心I’の距離の二乗は、(∠B、∠Cの傍心も同様)
|OI’|²=R²+abc/(-a+b+c)
その他参考までに。
[定理14] 垂心Hと内心Iの距離の二乗は、
|HI|²=4R²-(a³+b³+c³+abc)/(a+b+c)
フェルマー点Pは、∠APB=∠BPC=∠CPA=120°、
余弦定理より、
2(x²+y²+z²)+xy+yz+zx=a²+b²+c²
展開公式、
(x+y+z)²=x²+y²+c²+2(xy+yz+zx)より、
[定理15] フェルマー点と各頂点の距離の和の二乗は、
(x+y+z)²=(a²+b²+c²)/2+√3abc/2R
[定理16] フェルマー点Fと重心Gの距離の二乗は、
|FG|²=(a²+b²+c²)/18-abc/(6√3R)