(3)三角形に内接する正三角形の定理
ここでは、三角形に内接する正三角形に関する定理をまとめています。
[定理3−1] 頂角が120°の三角形の場合
△ABCで、∠A=120°、、点D、E、Fはそれぞれ、BC、CA、AB上にあるとする。
(1)
△DEFが正三角形のとき、頂点Dは∠Aの二等分線とBCの交点である。
(2)
点Dが∠Aの二等分線とBCの交点であるとき、∠EDF=60°になる点E、Fをとれば△DEFは
正三角形である。
[証明]
(1)
△DEFが正三角形とすると、∠EAF=120°、∠EDF=60°なので、
四角形AFDEは円に内接する。
∠FAD=∠FED=60°、∠EAD=∠EFD=60°
よって、
∠FAD=∠EAD
したがって、直線ADは∠Aの二等分線である。
(2)
逆に、直線ADが∠Aの二等分線で、∠EDF=60°のとき、∠EAF=120°なので、
四角形AFDEは円に内接する。
∠EAD=∠EAF=∠EDF=60°より、DE=DF=EF
よって、△EDFは正三角形である。
∠Aの二等分線とBCの交点以外の点を通る内接正三角形は存在しないことになります。
等力点が、Dであり、正三角形の頂点の位置にあることに注目です。
[定理3−2] 三つの外接円
図のように、△ABCに正三角形LMNが内接している。
△ANM、△BLN、△CMLの外接円の中心をそれぞれ、P、Q、Rとする。
(1) △PQR∽△ABC
(2) △PQRが最も小さくなるとき、△PQRと△ABCの相似比は:1:2である。
[定理3−3] 逆
鋭角三角形ABCの内部に点Pがある。
[証明]
(1)
PD=ksinα、PE=ksinβ、PF=ksinγとする。
△PBC=1/2・PB・PCsinα=1/2・BC・PD=1/2・a・ksinα
よって、
PB・PC=ka
同様に、
PC・PA=kb、PA・PB=kc
したがって、
(PA・PB・PC)/(PB・PC):(PA・PB・PC)/(PC・PA):(PA・PB・PC)/(PA・PB)
=PA:PB:PC
=(1/a):(1/b):(1/c)
(2)
四角形AFPEは円に内接する四角形で、PAは直径なので、
正弦定理より、
EF=PAsinA
同様に、
FD=PBsinB、DE=PCsinC
(1)より、
EF:FD:DE=(1/a・sinA):(1/b・sinB):(1/c・sinC)=1:1:1
よって、
△DEFは正三角形である。
(3)
円周角の定理より、
∠PBF=∠PDF、∠PCE=∠PDE
∠PDF+∠PDE=60°
よって、
α=∠BPC=∠A+∠PBF+∠PCE=∠A+PDF+∠PDE=∠A+60°
同様にして、
β=∠B+60°、γ=∠C+60°
[定理3−4] 三頂点から最小正三角形への垂線
鋭角三角形ABCに正三角形DEFが図のように内接している。△DEFは△ABCに内接する最小の正三角形である。
[証明]
頂点A、B、Cから正三角形への垂線の足をそれぞれ、P、Q、Rとします。
△DEFは最小の正三角形だから、等力点をJとすると、
∠JFA=∠JEA=90°
四角形AFJEは円に内接するので、
∠AJE=∠AFE
∠APF=∠AEJ=90°より、∠FAP=∠JAE
APの延長上に点Gを∠ABG=∠B+60°になるようにとる。
このとき、∠AJC=∠ABG=∠B+60°より、
△AJC∽△ABG
AJ:JC=1/a:1/c=c:aだから、AB:BC=c:a
よって、点Gは、対辺BCを一辺とする正三角形の頂点である。
他の頂点も同様。
各頂点と対辺の正三角形の頂点を結ぶ直線は一点で交わる。(フェルマー点)
[定理3−5] 正三角形の一辺
図のように、△ABCに正三角形DEFが内接している。
各頂点から、向かいの正三角形の一辺におろした三本の垂線が、
一点Pで交わっている。
このとき、△ABCの面積をS、AP+BP+CP=L、として、
正三角形の一辺の長さは、ℓは、
ℓ=2S/Lである。
[証明]
AP⊥EFより、
四角形AFPE=(AP・EF)/2
同様に、四角形BDPF=(BP・DF)/2、四角形CEPD=(CP・ED)/2
よって、
△ABC=四角形AFPE+四角形BDPF+四角形CEPD
=(AP・EF)/2+(BP・DF)/2+(CP・ED)/2
=EF(AP+BP+CP)/2
=S
EFは正三角形の一辺 ℓ=2S/L
なお、このとき、容易にわかるように、点Pはフェルマー点である。
よく知られているように、フェルマー点は、三つの頂点からの距離の和が最小の点である。
この定理より、フェルマー点からの、三つの頂点までの距離の和から、この三角形の一辺の長さを
求めることができる。
フェルマー点から、三つの頂点までの距離の和 L
L=√{(a²+b²+c²)/2+2√3S}
よって、この正三角形の一辺の長さℓは、
ℓ=√2S/√{(a²+b²+c²)+4√3S}
また、三角形に内接する最小の正三角形の一辺は、直接計算することもできる。
等力点をJ、最小の正三角形を、DEFとします。
JA=k/a、JB=k/b、JC=k/c とすると、
△JBCで、余弦定理より、
a²=(k/b)²+(k/c)²-2(k/b)(k/c)cos(A+60°)
k=abc/√{b²+c²-2bccos(A+60°)}
=√2abc/√(a²+b²+c²+4√3S)
△JBDで正弦定理より、BJは直径なので、
DE=BJ・sinB=k/2R (Rは外接円の半径)
=√2/√(a²+b²+c²+4√3S)・abc/2R
abc/4R=Sより、
=2√2S/√(a²+b²+c²+4√3S)
[定理3−6] 最小の正三角形の一辺
三角形に内接する最小の正三角形の一辺の長さℓは、
ℓ=2√2S/√(a²+b²+c²+4√3S)
三角形に内接する三角形のなかで、垂足三角形の周の長さが、最小であることが知られている。
また、その周の長さを、mとすると、
m=2S/R
[定理3−4]から、mR=ℓL
ℓ:R=m:L
また、最小の正三角形の周の長さは、3ℓなので、
m:3ℓ=L:3R
すなわち、次の定理が得られる。
[定理3−7] 正三角形の一辺と外接円の半径
(1)
最小の正三角形の一辺と外接円の半径の比は、内接する三角形の周の長さの最小値と内部の点から三頂点までの距離の和の最小値の比に等しい。
ℓ:R=m:L
(2)
内接する三角形の周の長さの最小値と最小の正三角形の周の長さの比は、内部の点から三頂点までの距離の和の最小値と外接円の半径の三倍に等しい。
m:3ℓ=L:3R
[証明]