(4)三角形に外接する正三角形の定理

このページは、三角形に外接する正三角形について、考察しています。

 内接する正三角形の重心の軌跡は直線でしたが、外接する正三角形の重心の軌跡は円になります。


[定理4ー1] 外接三角形の重心の軌跡
図のように、正三角形LMNが△ABCに外接するように移動するとき、正三角形LMNの重心Tは、△ABCの重心Gを中心として半径がフェルマー点と重心の距離FGの円周上を動く。
[証明]
BC、CA、ABを弦とする円周角が60°の円の中心をそれぞれ、P、Q、Rとする。
△ABCに外接する正三角形LMNの頂点は、それぞれこの円周上にあります。
この3円の交点をF(フェルマー点)とする。
頂点Lが直線FP上にあるときの正三角形LMNを考えます。
このとき、頂点M、Nは、それぞれ直線FQ、FR上にあります。(最大の正三角形)
正三角形LMNが△ABCに外接するように移動するとき、
∠FLC、∠FMCは一定なので、△FLMは、頂点Fを定点に相似をたもったまま動く。
△LMNの重心Tは、辺LMに対して定まった位置にあるので、△FLTも頂点Fを定点に
相似をたもったまま動く。
(∠FLT=∠BLT-∠BLF=30°-∠BLTで一定、LM:LTは一定よりLF:LTは一定)

△FLTの頂点Lは、点Pを中心として半径PFの円周上を移動するので、頂点Tも辺FTの中点を中心として半径FT/2の円周上を移動する。

※詳細は、[予備定理3−5]

ところで、△PQRは、点Fを相似の中心として、△LMNと相似比1:2の三角形だから
FTの中点は△PQRの重心Gと一致する。

また、△PQRはナポレオンの正三角形なので、△PQRの重心は、△ABCの重心と
同じ点である。

以上のことから、
正三角形LMNの重心Tは、△ABCの重心Gを中心として半径がフェルマー点と重心
の距離FGの円周上(一部)を移動する。


次に外接正三角形の最大値、最小値を求めてみます。

 

三角形ABCで、AB=c、BC=a、CA=b、(a≧b≧c)

外接円の半径をRとします。

この三角形に外接する正三角形の1辺について考えてみます。

AB、BC、CAを弦とする円周角60°の円P、Q、Rをかきます。

半径は、それぞれ、c/√3、a/√3、b/√3、

3円の交点をGとします。(1点でまじわる。フェルマー点)

頂点ABCを通る正三角形DEFの頂点は、この3つの円周上にあります。

外接正三角形の最大値

 

この正三角形の1辺の最大値は、GDがもっとも長いとき、

すなわちGPDが直径のとき。(赤い三角形 )

 

この長さの二乗は、

△GPDBEQで、DG=2c/√3、EG=2a/√3

また、∠GBA=∠GDA、∠GBC=∠GECより

∠DGE=180°-(60°-∠GDA)-(∠60°-∠GEC)=60°+(∠GBA+∠GBC)=60°+∠B

余弦定理より、

DE²=DG²+EG²-2DG・EGcos(60°+B)

cosB=(a²+c²-b²)/2ac、sinB=b/2Rをつかって、

DE²=2(a²+b²+c²)/3+2√3abc/3R

 

ちなみに、これはナポレオンの正三角形PQRの1辺の2倍である。

 

外接正三角形の最小値

 

最小値は、GDがもっとも短いとき。

 

(1)∠Aだけが60°以上のとき

GDの最小値は、DがBにかさなるとき(GBが最小)(青い三角形)

(証明は下に※2)

 

このときのFの位置をL、Eの位置をMとすると、

△ALCで、正弦定理より、

AC/sin∠ALC=AL/sin∠ACLより、b/(√3/2)=AL/sin(A-60°)

AL=2bsin(A-60°)/√3

cosA=(b²+c²-a²)/2bc、sinA=a/2Rをつかって、

AL=ab/2√3R-(b²+c²-a²)/2c

よって、

BL=BA+AL=c+AL=√3ab/6R+(a²+c²-b²)/2c

 

(2)∠Aが120°以上のとき

CAと円Pの交点をNとする。

Gは△ABCの外部にあるので、GDの最小値は、DがNにかさなるとき

求め方は(1)と同じ

CN=√3ac/6R+(a²+b²-c²)/2b

 

 (3)二つの内角が60°以上のとき

図のように、ABを通る正三角形をCLL'、CBを通る正三角形をCP'P、

CAを通る正三角形をCNN'とする。

 

・CN>CPの証明(緑の正三角形と青の正三角形)

∠CNP=∠CBA、∠CPN=∠CAB

∠CAB>∠CBAより、∠CPN>∠CNP

よって、CN>CP(青の正三角形の方が小さい)

 

・CLとCPの大小(青の正三角形と赤の正三角形)

∠CP'L=∠CAB=A

∠CLP'=∠CAP'=C+60°=240°-(A+B)

∠CLP'-∠CP'L=240°-(2A+B)

よって、

2A+B≦240°のとき、

∠CLP'≧∠CP'L

すなわち、CP'≧CL(青い正三角形が最小)

最小値CL=2b/√3・sinA=ab/(√3R)

2A+B>240°のとき、

∠CLP'<∠CP'L

すなわち、CP'<CL(赤い正三角形が最小)

最小値CP'=2b/√3・sin(C+60°)=bc/(2√3R)+(a²+b²-c²)/2a

 

以上のことから、x軸をA、y軸をBの座標平面上に最小の正三角形の領域を

色分けすると、次のようになる。

 

…ABを通る正三角形を最小とするとき。

…BCを通る正三角形を最小とするとき。

…CAを通る正三角形を最小とするとき。

 

※1必要ならば、R=abc/√{(a+b+c)(b+c-a)(a+c-b)(a+b-c)}をつかってもよい。

 

※2[証明]

CAと円Pの交点をNとする。

△ACL∽△ABN

AC=kAB、AL=kAN(円Rの方が円Pより大きいので、k≧1)

LB=AL+AB=kAN+AB、CN=AC+AN=kAB+AN

よって、

LB-CN=(k-1)(AN-AB)

(1)A≧120°のとき、

∠ANB≦∠ABNより、AB≦AN

CN≦LB(緑の正三角形が最小)

 

(2)A<120°のとき、

∠ANB>∠ABNより、AB>AN

LB<CN(青の正三角形が最小)