(8)三頂点からの距離の和、二乗の和が等しい点


ここでは、三角形で一点と二つの頂点でできる三つの三角形の三辺の和が等しい点、三辺の二乗の和が等しい点、を調べるとともに、その二点と内心が一直線上にあることを証明します。

[定理1]

△ABCで、一点と二つの頂点でできる三つの三角形を考えます。

(点Pの場合、△PAB、△PBC、△PCA)

Iを内心、Pを三つの三角形の三辺の和が等しい点、Qを三つの三角形の三辺の二乗の和が等しい点とする。(△ABCは、正三角形でないとする。)

三点、P、Q、Iは、一直線上にある。 

 

[解]

 BC=a、CA=b、 AB=c、(b≦a≦c)とする。 

ℓ=c-a、m=a-b、とする。ℓ+m=c-b

三つの三角形の周の和が等しいので、

PA=t、PC=t+ℓ、PB=t-mと表せる。

このような点Pを

求める。

 

ℓPB²+mPC²=ℓ(t-m)²+m(t+ℓ)²=(ℓ+m)t²+ℓm(ℓ+m)…①

 

辺BCをm:ℓに内分する点をDとすると、

スチュワートの定理より、

DC・PB²+BD・PC²=BC(PD²+DC・BD)

DC=ℓ/(ℓ+m)・BC=ℓ/(ℓ+m)・a、BD=ℓ/(ℓ+m)・BC=ℓ/(ℓ+m)・aより、

ℓPB²+mPC²=(ℓ+m)(PD²+ℓm/(ℓ+m)a²…②

 

①②より、

t²+ℓm=PD²+ℓm/(ℓ+m)²・a²

PA=tより、

PA²-PD²=ℓm/(ℓ+m)²・a²-ℓm

PA²-PD²=(c-a)(a-b)(a-c+b)(a+c-b)/(c-b)²…③

 

二点からの距離の差が一定の点Pは、線分AD上の点Rを通りADに垂直な直線である。

ちなみに

AR={AD²+ℓm/(ℓ+m)²・a²-ℓm}/2AD

AD=(ℓc²+mb²)/(ℓ+m)-ℓma²/(ℓ+m)²

={a⁴+b⁴+c⁴-a³ (b+c)-b³(a+c)-c³(a+b)-abc(a+b+c)}/(c-b)²

 

点P(x、y)、 A(d、e)、D(f、0)とすると、

(x-d)²+(y-e)²-(x-f)²-y²=(c-a)(a-b)(a-c+b)(a+c-b)/(c-b)²

2(f-d)x-2ey=(c-a)(a-b)(a-c+b)(a+c-b)/(c-b)²-d²-e²+f²

 

d=(c²-b²)/2aより、

e²=(b+a-c)(b-a+c)(a+c+b)(a+c-b)/4a²

f=a(2a-b-c)/2(c-b)

 

よって整理すると、点Pは次の直線上にある。

 

(d-f)x+ey={(b-c)²-a(3a-2b-2c)}/4…(A)

 

ただし、

d-f={(c-b)²(c+b)-a²(2a-b-c)}/2a(c-b)

e²=(b+a-c)(b-a+c)(a+c+b)(a+c-b)/4a²

 

[補題1]

△ABCで、BC=a、CA=b、AB=c、

(b≦a≦c)

点Pは△ABP、△BCP、△CAPの三辺の和

が等しい点、点Iは内心である。点Dは辺BCを

(a-b):(c-a)に内分する点である。

このとき、

直線ADと、直線PIは直交する。

[解]

内心Iから、辺BC、ABへの垂線の足を、

L、Mとする。

AM=s-a、CL=s-c

AI²=AM²+IM²、DI²=DL²+IL²

IM=ILより、

AI²-DI²=AM²-DL²

=(s-a)²-(s-c-CD)²

=(c-a+CD)(2s-a-c-CD)

 

Dの座標は(a(2a-b-c)/2(c-b)、0)なので

CD=a/2-a(2a-b-c)/2(c-b)=a(c-a)/(c-b)

よって、

AI²-DI²=(c-a)(c-b+a)/(c-b)・{b(c-b)-a(c-a)}/(c-b)=(c-a)(a-b)(a-c+b)(a+c-b)/(c-b)²

=AP²-DP²

よって、

直線ADと直線PIは直交する。

[補題2]

三辺の二乗の和が等しい点Qは、直線PI上にある。

[解]

三辺の二乗の和が等しい点の座標は、

B(-a/2、0)、C(a/2、0)、A(d、e)とすると、

x=(b²-c²)/2a

y={a(-5a²+2b²+2c²+4d²+4e²)+4d(c²-b²)}/8ae

d²+e²は、頂点Aからの中線の長さなので、

d²+e²=(2b²+2c²-a²)/4

d=(c²-b²)/2aより、

y={a²(-3a²+2b²+2c²)+(c²-b²)²}/4a²e

 

((b²-c²)/2a、{a²(-3a²+2b²+2c²)+(c²-b²)²}/4a²e)

 

ただし、

d=(c²-b²)/2a

d-f={(c-b)²(c+b)-a²(2a-c-b)}/2a(c-b)、

e²=(b+a-c)(b-a+c)(a+c+b)(a+c-b)/4a²=4(s(s-a)(s-b)(s-c))/a²

 

(A)の直線の方程式の左辺に、三辺の二乗の和が等しい点の座標を代入すると、

 

(d-f)x+ey

={(c-b)²(c+b)-a²(2a-c-b)}/2a(c-b)・(b²-c²)/2a

+e{a²(-3a²+2b²+2c²)+(b²-c²)²}/4a²e

={(b-c)²-a(3a-2b-2c)}/4

 

よって、(A)の直線上にある。

 

三辺の二乗の和が等しい点は、ド・ロンシャン点と一致する。

内心、ド・ロンシャン点を通る直線を、ソディ線というそうです。

 

内心、三辺の二乗の和が等しい点、三辺の和が等しい点は、ソディ線上にある。

 

 蛇足ですが、(A)の直線がわかることにより、点Pの座標が計算しやすくなります。

[定理2]

△ABCで、BC=a、CA=b、AB=c、

B(-a/2、0)、C(a/2、0)、A(d、e)とするとき、

三辺の和が等しい点Pの座標(x、y)は、

B²E²>A²D²とき、

 

x=[-ACD²-√{B²D²E²(C²+B²E²-A²D²)}]/(B²E²-A²D²)

 

y=[B²CE²+√{B²D²E²(C²+B²E²-A²D²)}]/B(B²E²-A²D²)

 

ただし、

A=d-f={(c-b)²(c+b)-a²(2a-c-b)}/2a(c-b)、

B=e=√(b+a-c)(b-a+c)(a+c+b)(a+c-b)/2a=2√(s(s-a)(s-b)(s-c))/a

C={(b-c)²-a(3a-2b-2c)}/4

D=(c-b)/2、

E=√{a²-(c-b)²}/2

 

[解]

AB+PB=AC+PCなので、

c+√{((x-a/2)²+y²}=b+√{(x-a/2)²+y²}

(c≧bのとき、x≦0)

計算して、

4{(a²-(c-b)²}x²-4(c-b)²y²+(c-b)⁴-a²(c-b)²=0

標準形にすると、

x²/{(c-b)/2}²-y²/[{√{a²-(c-b)²}/2]²=1…(B)

(ただし、c≧bのとき、x≦0)

 <参考>

焦点(±a/2、0)

|PF-PF’|=c-b

準線 x=(b-c)²/(2a)

離心率 a/(c-b)

 

Ax+ By=C…(A)

x²/D²-y²/E²=1…(B)

 

(A)(B)の解は、

 

 

x=[-ACD²-√{B²D²E²(C²+B²E²-A²D²)}]/(B²E²-A²D²)

 

y=[B²CE²+√{B²D²E²(C²+B²E²-A²D²)}]/B(B²E²-A²D²)

 

c-b>0のとき、x<0より

-ACD²-√{B²D²E²(C²+B²E²-A²D²)}]/(B²E²-A²D²)<0

B²E²>A²D²

 

ただし、

A=d-f={(c-b)²(c+b)-a²(2a-c-b)}/2a(c-b)、

B=e=√(b+a-c)(b-a+c)(a+c+b)(a+c-b)/2a=2√(s(s-a)(s-b)(s-c))/a

C={(b-c)²-a(3a-2b-2c)/4

D=(c-b)/2

E=√{a²-(c-b)²}/2

 

ちなみに、c≧bの条件はなくても良いことが調べればわかる。

 

a=2のとき、解の存在範囲(頂点Aの位置)(B²E²>A²D²)は、下の図のようになる。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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