(9)内心・外心・重心のなす角(∠IOG)
三角形の内心をI、外心をO、重心をGとすると、
あまり知られていない意外な面白い性質があります。
[定理1] △ABCの重心、外心、内心の位置関係
△ABCの外接円の半径R、内接円の半径rが一定のとき、
△ABCの重心は、
外心Oと内心Iを2:1に内分する点M(OM=2√(R²-2Rr)/3)を中心とし、
半径(R-2r)/3
の円周上にある。
[定理2]
△ABCの内心をI、外心をO、重心をGとするとき、
∠IOG<30°
以下その証明
[定理1] △ABCの重心、外心、内心の位置関係
△ABCの外接円の半径R、内接円の半径rが一定のとき、
△ABCの重心は、
外心Oと内心Iを2:1に内分する点M(OM=2√(R²-2Rr)/3)を中心とし、
半径(R-2r)/3
の円周上にある。
[証明]
△ABCについて、九点円の中心をNとする。九点円の半径はR/2であり、フォイエルバッハの定理より内接円Iは九点円に内接するので、NはIを中心とする半径R/2-rの円周上の点である。
九点円の半径はR/2であり、フォイエルバッハの定理より内接円Iは九点円に内接するので、NはIを中心とする半径R/2-rの円周上の点である。
また、△ABCの外心Oと重心Gと九点円の中心Nは同一直線(オイラー線)上にあり、GはONを2:1に内分する点である。
したがって、GはNが描く円を外心Oを相似の中心として相似比2/3の円、すなわち、線分OI(=√R²-2Rr)を2:1に内分する点Mを中心とし、半径(R-2r)/3の円周上の点である。
[定理2]
△ABCの外心をO、内心をI、重心をGとするとき、
∠IOG<30°
である。
[証明]
∠IOG=θとする。
点Gは中心がIO上の点Mの円周上を動くので、θの最大値は∠MGO=90°のとき。
MO=2√(R(R-2r))/3、MG=(R-2r)/3、
sinθ=(R-2r)/2√(R(R-2r))=√(1-2r/R)/2<1/2
よって、∠IOG<30°
[定理3]
外接円Oの半径R、内接円Iの半径rが一定の三角形ABCで,
∠IOGが最大値となるのは、
頂角の一つが60°のときである。
[証明]
△OGMと△ONIで、
OM:MI=2:1
点Nは九点円の中心なので、
OG:GN=2:1
よって、
△OGM∽△ONI
∠OGM=∠ONI=90°
すなわち、
IN⊥OH
ところで、一つの頂角をAとして、
外心と垂心は、角の二等分線に関して、共役だから、
∠OAI=∠HAI
IN⊥OHだから、
3点A、I、N、は一直線上にある。※
AO=AH=R
AH=2R|cosA|=Rより、
cosA=1/2
A=60°
[別解]
MO=2√(R(R-2r))/3、MG=(R-2r)/3、∠OGM=90°より
三平方の定理から
GO²=(R-2r)(3R+2r)/9
また、一般に、S=(a+b+c)/2とすると、(a、b、cは三辺の長さ)
GO²=R²-(a²+b²+c²)/9=R²-2(s²-4Rr-r²)/9
よって、
s=√3(R+r)
また、
abc=4Rrs=√3Rr(R+r)
ab+bc+ca=s²+4Rr+r²=3R²+10Rr+4r²
これより三角形の三辺の長さは、
√3R
1/2・{√3・(R+2r)±√(R-2r)(3R+2r)}
したがって、弦√3Rに対する円周角は60°なので、頂角の一つは60°である。
さらに詳しく
[定理4]
∠A=60°、残りの小さい方の頂角をB、大きい方の頂角をCとすると、
∠IOG=30°-∠B/2、または、|C-B|/4
R、rを使って表すと、
sin∠IOG=√(1-2r/R)/2
[証明]
直線OHと直線AB、ACの交点をD、E
直線BHと直線ACの交点をF、
とします。
∠ADN=∠AEH=60°
∠EHF=∠PHB=30°
点Hは垂心だから、
∠CAH=∠DAO=∠DBO=∠CBH=90°-C
まず、
∠OIB=30°を証明する。
∠A=60°より、Iは内心なので、
∠BIC=120°
孤BCに対する円周角は240°
△IBCの外接円の中心O’は、孤BCの中点で、半径BO’は円Oの半径と同じR
∠BOC=120°なので、点Oもその円周上にある。
∠BO’C=120°
よって、孤BOの中心角は、60°、その円周角で
∠OIB=30°
次に、
直線BIと直線OHの交点をPとします。
∠OIP+∠IOP=∠PBH+∠PHB
∠OIP=∠PHB=30°より、
∠IOP=∠PBH
よって、
∠PBH=∠PBC-∠CBH=B/2-(90°-C)=B/2+C-90°=B/2+(120°-B)-90°
∠IOG=∠PBH=30°-B/2…(1)
あるいは、
∠PBH=∠B/2-(90°-C)=∠B/2+C-90°=∠B/2+C-(A+B+C)/2=C/2-A/2=C-30°
∠IOG=∠PBH=C/2-30°…(2)
((1)+(2))/2より、
∠IOG=(C-B)/4
後半は、[定理2]の証明による。
[別解]
∠IOG=θ、∠B/2=αとおく。
sinθ=(1-√(2r/R))/2、cosθ=√(3R+2r)/2
cos(30°-θ)={√(3(3R+2r))+√(R-2r)}/4
s=√3(R+r)
a=√3R、b=1/2・{√3・(R+2r)-√(R-2r)(3R+2r)}
s-b={√3R+√(R-2r)(3R+2r)}/2
BI²=ac(s-b)/sから
cosα=(s-b)/BI=√{10R²+4Rr+2R√(3(R-2r)(3R+2r)}/16
={√(3R(3R+2r))+√R(R-2r)}/4
よって、
cosα=cos(30°-θ)
すなわち、
∠IOG=30°-∠B/2
<補足>
∠BAI=∠CAI
点Mは、BCの中点、
∠IMB=∠IMC=90°
ならば、
AB=AC
[証明]
△IBM≡△IMCより、
BI=CI
△ABIと△ACIで、
AI=AI
BI=CI
∠BAI=∠CAI
∠AIBと∠AICは鈍角なので、(B、CはIを通るAIとの垂線DEについてAと反対側にある)
二辺とその間の角以外の角が等しいので、
△ABI≡△ACI
よって、
AB=AC
[参考]
フォイエルバッハ点Tと内心Iを結ぶ直線と(九点円の中心Nを通る)
オイラー線のなす角θは、
cosθ=(3(R++r)²-s²)/((R-2r)√(9R²+8Rr+2r²-2s²))
また、
∠Aについて、
オイラー線は、
∠BAH=∠CAO=|B-C|/2
AH:AO=2R|cosA|:1
<例1>
R=1、r=1/4、のとき、
cosθ=(75-16s²)/2√(178-32s²)
さらに、
s=2のとき、
cosθ=11/10√2
<例2>
R=1、r=1/4、θ=60°のとき、
s²=(74-√29)/16
三辺の長さは、
a=0.71165…、b=1.5379… c=1.8922…
[類題1]
∠A=60°の三角形ABCの
オイラー線は、直線AIと直交する
ことを証明せよ。
[類題2]
∠A=60°の三角形ABC(小さい方の角をB)の
外心をO、内心をIとするとき、
∠OIB=30°を証明せよ。
[類題3]
∠A=60°の三角形ABC(小さい方の角をB)の
外心をO、内心をIとするとき、
∠IOG=30°-∠B/2
を証明せよ。
<参考>
鋭角三角形でも、∠IOG<15° にならない場合がある。
{例}
∠A=89°、∠B=25°、∠C=66°
のとき、∠IOG=15.12…°
∠Bは25°~29°までOK
[定理5]
△ABCの外接円Oの半径を
R=1とします。
(一般性を失わない)
重心をG、内接円Iの半径をrとします。
r≧(√3-1)/2
のとき、
∠IOG≦15°
[証明]
∠A=60°のとき、∠IOGは最大値をとる。
このとき、
∠IOG=30°-∠B/2
∠B=30°より大きいと題意が証明される。
このとき、AC=1
よって、AC≧1の条件を求める。
短い方の辺の長さは、半径rのとき、
1/2・{2√3+√3-√(-4r²-4r+3)}
よって、
1/2・{2√3+√3-√(-4r²-4r+3)}≧2
これを解いて、
r≧(√3-1)/2
このとき、∠B≧30より、
∠IOG≦15°
一般的に、∠ B=θのとき、
1/2・{2√3+√3-√(-4r²-4r+3)}=2sinθ
この解をrθとすると、
r≧rθのとき、
∠IOG≦30°-θ/2
逆に、r<rθのとき、
30°-θ/2<∠IOG<30°
rによっては、一つの角が60°のとき鋭角三角形とは限らない。
[定理6]
直角三角形ABCの外接円Oの半径を
R=1とします。
(一般性を失わない)
重心をG、内接円Iの半径をrとします。
このとき、
sin∠IOG=r√(1-2r-r²)/√(1-2r)
(0<r≦√2-1)
<注>
この関数は、r=1/3のとき最大値を取り、そのときの、∠IOG=θとすると、
sinθ=√6/9
θ=15.793169048264…°
三辺の長さは、2、(4±√2)/3
sinB=(4-√2)/6、B=25.5287793655093…°
sinC=(4+√2)/6、C=64.4712206344902…°
[証明]
△AOIで、
IO=√(1-2r)
AO=1(垂心HはAと一致する。)
AI=√2r
よって、
cos∠IOG=cos∠IOA=(-r²-r+1)/√(1-2r)
sin∠IOG=r√(1-2r-r²)/√(1-2r)
[別解]
IO=√(1-2r)
HO=1なので、OG=1/3(Hは垂心でAと一致する。)
s=r+2
IG²=s²/9+(5r²-16r)/9=(6r²-12r+4)/9
よって、
cos∠IOG=(-r²-r+1)/√(1-2r)
sin∠IOG=r√(1-2r-r²)/√(1-2r)
[定理5]と[定理6]を合わせると、
0<r≦(√3-1)/2のとき、sin∠IOG=r√(1-2r-r²)/√(1-2r)
(√3-1)/2<r≦1/2のとき、sin∠IOG=√(1-2r)/2
紫の線が、x=1/3、緑の線が、x=(√3-1)/2
rによるsin∠IOGの最大値の変化
[定理7]
鈍角三角形でない三角形ABCで、外接円Oの半径をR=1とします。
重心をG、内接円Iの半径をrとするとき、
∠IOGの最大値θは、r=1/3のとき、
sinθ=√6/9を満たす。
一般に、r、sに対して、
sin∠IOG=√(s⁴+(2r²-20r-4)s²+r⁴+12r³+48r²+64r)/2√{(1-2r)(2r²+8r+9-2s²)}